夫のギター仲間である yayoyayoさん がご自身のブログで
「野いばら」(梶村啓二著) の感想を書いてらっしゃったので、
私も早速図書館で借りて読んでみました。
yayoyayoさんのブログを拝見する数日前に日経新聞で
この本の紹介があり、興味を持っていました。
これは昨年の第3回日経小説大賞を受賞した作品です。
あらすじを簡単に紹介しますと、
「種苗会社でM&Aの業務に携わる主人公縣(あがた)は、
市場調査としてイングランドの庭園を視察に行く途中、
偶然立ち寄ることになった
コッツウォルズのオープンガーデンの女主人から、
かつての英国軍人エヴァンズの手記を手渡されます。
100年以上封印された手記は
『日本人に読んで欲しい』という注意書きが添えられたものでした。
その手記に書かれていたものは、
生麦事件直後の横浜で、
幕府の軍事情報探索を命じられたエヴァンズの、
彼の日本語教師となった日本人女性ユキへの想いでした・・・
吹き荒れる攘夷の嵐に翻弄されながらも、
それぞれの思いとはうらはらに
自らの役目にひたむきに生きるしかなかった、
多くの名もなき人々がいました。
手記に心奪われた主人公が
エヴァンズの終の住処を再び訪れると
清々しい香りの白いノイバラの群落に
出合います。
日本原産の清楚な花が
150年の時を経て何故欧州でよみがえったのか・・・」
本の中でエヴァンズはたびたび
「音楽は花に似ている・・・」
と述べています。
「音は生まれたとたんに次々と消えていき、
とどめることはできない。
しかし、楽譜という記号に変化することによってその生命は保存され、
持ち運び可能なものに変化する。
つかの間の春を終え、
枯れ果てた花がその命の輝きを硬い種子に閉じ込め、
長い時間を生き延び、
生き延びるだけでなく何者かに運ばれて
自由に世界を旅するように。」
そして
「流れ着いた旅先でその生命は再び解きほぐされ、
美しく蘇るのだ。」
と。
日本原産のノイバラが遠いイングランドで150年の時を経て蘇ったように・・・
ノイバラ wikipedia より
大賞受賞の理由はいろいろあったようですが、
そのひとつが
抜群の文章力だったそうです。
安定感のある文章、次へ次へと読み進みたくなるストーリー、
2日間で一気に読んでしまいました。
作者の梶村啓二氏は
「この小説には、グローバリズムや時の奔流の中で
それぞれの立場で懸命に生きる人々の姿が描かれています。
しかし、本当の主人公は、
すべてを運び去る『時間』なのです」
と述べています。
細かいことを言えばいろいろあるかもしれませんが、
なかなか面白く、お勧めの小説です。
「音楽は花に似ている」以下の文章、素敵な表現ですね。
返信削除最近よく聴いているドビュッッシーは、今年生誕150年だそうです。クラッシックを聴くたび、時を経てもなお心に響くことに感動しています。
この本を読んでみたくなりました。
帰ったらやることリストにメモしておきます。(*^_^*)
このコメントは投稿者によって削除されました。
削除55okeikoさん、
削除あ~そうですね、クラシックは特にその感が強いですね。
面白い本です。1862年と2009年の時代が交互に描かれていて、読んでいる方も時代を行ったり来たり、飽きません。是非、日本に戻られたら読んでみて下さい。
★西暦が間違っていたので、投稿し直しました。