2017年1月28日土曜日

映画「沈黙‐サイレンス‐」

26日木曜日、映画を見て来ました。

遠藤周作原作、マーティン・スコセッシ監督の「沈黙‐サイレンス‐」です。

テレビで宣伝していますし、新聞の映画紹介欄やネットでもいろいろ書かれていますので、
ご存知の方が多いかと思います。

私は原作を40数年前の学生時代と結婚してからと2回読みましたが、
どちらにしろずいぶん前のことですので、細部は忘れていました。

「沈黙」のパンフレット~ロドリゴ神父とモキチ(塚本晋也)


マーティン・スコセッシ監督は
1988年、ニューヨーク聖公会のポール・ムーア大司教から
遠藤周作氏の「沈黙」をプレゼントされます。

カトリック信者であるスコセッシ監督は
この本が監督本人に語りかけているような衝撃を受け、
映画化への決意を固めたと言われます。

監督は次のように述べています。
「遠藤が本で提示したテーマは、私がとても若い時からずっと考えていたものです。
私はこの歳になっても、信仰や人間のありようについて考え、疑問を感じていますが、
これらは遠藤の本が直接的に触れているテーマなんです」
(映画「沈黙」の公式HPより)

マーティン・スコセッシ監督とセバスチャン・ロドリゴ神父役のアンドリュー・ガーフィールド


映画化にあたり、出資者を探す困難や
脚本家ジェイ・コックスと二人で何度もドラフトを書き直して
満足がいくまで15年もかかったことなど、
紆余曲折を経て
監督が原作を読んでから28年後に映画はやっと完成しました。

資金面からロケ地はニュージーランドやカナダなど様々な地が検討され、
やっと台湾で17世紀江戸初期の日本を再現できる場所を見つけたということです。

信者の拷問を見るフェレイラ神父(リーアム・ニーソン)


ストーリーのご紹介は
これから映画を見る方のために控えておきたいと思いますが、
写真の説明を兼ねて大まかなあらすじだけ書いておきます。


イエズス会の高名な神父フェレイラが
布教のために訪れた日本で過酷な拷問を受け棄教したという知らせがローマに届きます。
弟子である若き宣教師ロドリゴとガルぺは
真相を探ろうと日本へ赴きます。

二人は
気弱なキチジローの導きによって日本の隠れキリシタンと会うことができますが、
やがて奉行所の役人に引き渡され囚われの身となります。

次々と拷問により命を落としていく信者を目の前にして
ロドリゴは自身が棄教すれば信者の命は救われると言われます。

殉教か、棄教か、
ロドリゴは苦しみます。

そして問い続けます。

「主よ、あなたは何故 沈黙を続けるのですか?」


ロドリゴ神父とキチジロー(窪塚洋介)

小説「沈黙」(1966)は
江戸時代初期のキリスト教弾圧の場面をもとに
神の存在や西洋と日本の思想的な違いを追及した作品で、
発表当時、一部のカトリック教会から強い反発を受け、
禁書扱いにする県が出るほどでした。

フェレイラ神父やロドリゴ神父は実在の人物をモデルにしています。

長崎奉行 井上筑後守(イッセー尾形)


日本におけるキリスト教の歴史において
最期まで立派にキリストの教えを守り抜いた人々は語り継がれる一方、
教えを捨てた人々は蔑ろにされました。

死への恐怖や信者を助けたいと願う苦悩、強い人間と弱い人間、
様々な受難の場面にまつわる出来事は
遠藤周作氏の執筆の動機となったことでしょう。


殉教者の姿に絶叫するロドリゴ神父

小説「沈黙」が海外で高い評価を受けるようになった一つの理由として
グレアム・グリーンの存在があります。

「第三の男」などの代表作があるイギリスの小説家グレアム・グリーンは
英訳された「沈黙」を読み、その年度のベスト3の1つに挙げています。

第一次世界大戦後にイギリス国教会からカトリックに改宗したグリーンは
「沈黙」をいち早く認めて
遠藤周作氏に対して作品を絶賛する手紙を送るだけでなく、
「20世紀のキリスト教文学で最も重要な作家である」と断言しています。

通辞(浅野忠信)とロドリゴ神父


また小説「沈黙」が海外で高い評価を得ていることは
2009年の英国ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき必読小説1000冊リスト」に選出され、
海外の読書好きが投票形式で決定する「日本文学ランキング100」
37位にランクインしていることからもわかります。



英語版の訳者 William Johnston神父(イエズス会)は
遠藤周作氏と深い親交がありました。

私は今は亡きJohnston神父と面識があり、
その優しく温かさに満ちたお人柄を忘れることができません。


「沈黙」は
キリスト教徒であるかないかで違った感想を持たれるでしょうし、
また信者であっても様々な思いを抱かせる小説、映画です。

一度ご覧になる価値のある映画だと思います。



★ご紹介した写真は最初のパンフレット以外は
映画「沈黙‐サイレンス‐」公式HP からお借りしました。



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